無題

2003年12月12日

この世界は"ほんとう"であふれているはずなのに、
その上から"うそ"で塗り固められている。
だから、ぼくらは外へ出ることに臆病になってしまった。

外に出るなら、"うそ"の上を歩かなければならない。
それは裸足で硝子の欠片の上を歩くようなものだから、
ぼくらはすぐに傷だらけになる。
大人はいつも鋼の靴を履いて
傷つかないように、必死に身を守っている。

靴を買うことすらできないぼくらは
外に出ることを世界から否定されている。
部屋の中に閉じこもって
窓の外からきらきら光る世界を見ている。
きらきら光る"うそ"はとてもきれいに見えるけど、
ぼくらはそれが何であるかを知っている。

この世界の"うそ"を取り除けば、
"ほんとう"が見えてくるけど、
幾重にも塗り固められた"うそ"は
そんなに簡単に消えてはくれない。
"うそ"を取り除くために自分の手が血だらけになる。
この手を血で汚さなければ、
"うそ"は消えないのだから。

だから、初めて"ほんとう"を見たときには、
自分の目がおかしくなるくらい
どろどろで、ぐちゃぐちゃで、汚いものだったけど、
でも、痛くは無かった。

世界はこんなにも"ほんとう"で満ち溢れているなんて
世界はこんなにも"うそ"で満ち溢れているなんて
外に出なければ知ることができなかった。

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出展 内緒

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